いちまいの絵 2023年3月【外套を脱いだ蕗の薹】

雪の養分と日中の気温が和らいで、
今年もようやく蕗の薹が、
自宅前にも顔を出してくれた。

秩父に移転した当時、馴染みの天麩羅屋・喜多八さんで、
「香本さん、これ描いてみるかい」と立派な蕗の薹を二ついただいた。
一日も置いておくと、どんどん開いていく様は、
まるで外套を脱ぎかけるかのようだ。

北風と太陽の話ではないが、
春がもうすぐ来ますよの知らせ(お役目)を果たした後には、
暖かい春一番頃の日差しを浴びて、
コート(マント?)を脱ぎたくなるのだろう。

厚手の和紙を閉じた画帳を見開きで使って描いた。
ゆえに中央に閉じ穴が写っている。
どんどん絵の具を吸収してぼやけるので、
輪郭を耐水ペン(黒)で描いた。
透明水彩ガッシュ、アクリルなどで彩色してある。
個人所蔵

 

【外套を脱いだ蕗の薹】
Butterbur sprout that took off the coat.
和紙に交響(多種)水彩。三々サイズ