高麗巾着田の取材とイメージスケッチの集積から描いた絵。
男と女で各々別の荷を背負って「乗り越える」ことを、
二枚別描画、セット展示とした。
本来「彼岸越え」と題すると、亡くなった方への悲しみを乗り越え、
という意味合いがあるが、今年は別の意味を付加し、
描いた。
作品手前に群生する曼殊沙華(彼岸花)の地がある。
新型コロナ終息の行方が定まらない今年は、
3密回避のため、無残にも刈り取られた。
ゆえに荒れる波のような、ざわめきのスピリッツが動いている。
中央に流れる川・・水量が多く、流れは日々変化し、たやすく横断はできない。
川をゆっくり見て過ごしたいものだと感じる。
彼岸(自分たちの現在の居場所)から
向こう岸の森を見ると、落ち着けるスピリッツが流れている。
星が瞬き、豊かな緑と自然に咲いた彼岸花たちの濃桃色も見える。
脅かすものはいない。
とにかく踏み出さねば・・そういう思いと強い願いから仕上げた。
男の樹、女の樹、それぞれモデルイメージとなった樹はある。
火垂るの光を入れると、印象が絞られ、説明的になりすぎるので、
追描しなかった。
『彼岸の川を越え』Cross the difficult river
キャンバスに油彩。二作セット 各1100mm×800mm