『武甲山胎動』2019年11月いちまいの絵

本家ホームページ2019年11月いちまいの絵です。

武甲山胎動』
紙に交響(多種)水彩
424×545mm(半切)サイズ(額入りの大きさ)

 

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かつて奥武蔵の名峰と称えられた山。
天然記念物の高山植物群生地保護よりも経済優先の政策?で、
旧山頂の信仰遺跡(縄文時代からの)や巨岩群も除き、
標高が28mも低くなった山(現在1,304m)、
今もほぼ毎日発破で石灰岩採掘で削られ続ける山、
それが武甲山だ。

秩父に移転してから、武甲山を幾度も描いてきた。
武甲山を愛し、40年にわたり削崩に反対し、丁寧な記録も残してきたYさんから、
「削られる前の武甲山を描いてほしい」と様々な資料をいただいていた。
イマジネーションを凝縮させ、制作して完成したのがこの絵だ。

勇壮な武甲山の地脈に這う龍のように流れる巴川に上空の星が瞬く。
竜神や狼信仰の気(スピリッツ)の流れを含んだ天空の気流。
石灰の流れは涙のようではなく、脈々と息づくエネルギーとして描いた。

昨今は、ヒトがもたらした温暖化によって、大規模な河川反乱など、
未曽有の災害が続いている。
本当に心からのお見舞いと、亡くなられた方々に哀悼の意を捧げたい。

ただそれは、罪のない人に自然界が牙をむいたのではない。
本来は、大地の恵み、雨の恵み、川の恵みによって、
人の生活と命が支えられてきたのだ。
そのこと・・人の暮らしがある灯りを、
川の傍の星屑のごとく、民家を描き足したかった。

武甲山を削る事によって、東京オリンピックや首都のインフラ整備が
成し遂げられたのは事実だろう。
しかし、もう止めるべきだと私は思う。

セザンヌが度々描いたサント・ヴィクトワール山も石灰の山だが、
てっぺんから削って変貌したりはしなかった。

http://www7b.biglobe.ne.jp/~artkomoto/1mai/1mai.html