来客(今年初めての入道)


昨日、今年初めての入道(積乱雲)が頭をのぞかせた。
空全体の雲は異なるが、夏の知らせを携えた来客がやってきた。
中学の頃、友人3人で夏休みに雲取山に登り、
山小屋に泊まったことがある。
山のかなたから分厚い入道雲が向かってきたのを見て
来客だと感じ、夢中でスケッチした。
山小屋のランプが気に入って、ミニチュアのを買って
アルコールを入れて火を付け、その灯りにしばらくハマッテいたっけ。
雑魚寝の山小屋に泊まった独身女性が私たち3人に嘆願した。
山小屋のオヤジが、いやらしい目つきで私を見ている
私を襲う気がするから、その時は助けてね・・
今思うと、自信過剰の とんでもない箱入り姉ちゃんのタワゴトだったが
美術部の少年には、熟睡できない山小屋の夜だった。

朝、雲取の頂上に登ったとき、前方から雲が来た
周囲が真っ白になった。涼しい蒸気が顔に当たって去って行った・・これが雲か
雲を身体全体で感じた。
約10年前に秩父に来たとき、入道を見てまた思った・・来客だ。
雲取山が、移住した秩父に近いのもそのとき知り、合板に描いた。
少年が見た来客は、もしかしたら秩父の入道だったかもしれない。
一昨日曇天の夕雲は、まったく違う形で隊列を進んでいた。

昨日は、大田は35℃くらいまで上がって、体内が火照っていた。
氷水でレタスやトマト、セロリ、ミョウガを冷やし
ニンニクを利かせたサラダをむしゃぶりついた。
チキンカレーを作って冷えたお腹を温めた。
夜10時頃、ようやく涼しさを感じた。
ひかりテレビで、小津安二郎監督の『浮草』を見て
志摩半島の人々にゆっくりと流れる時間を思った。
京マチ子が、着物が似合う美しい女優さんという印象だった。
杉村春子が いきな女性を好演していた。



『来客』個人所蔵