三人の「東方の賢人と言われる」男が、狭い湯船のぬるま湯に浸かって、
満足げに笑みを浮かべている。
右から「評し男」「眠り男」「逃げ男」。
共通するのは、自分は動こうとせず、懸命に動いている人を笑うことだ。
人の上げ足を取って評論するのが「評し男」。
大切なことや現実に目をつぶり、虚偽の夢を見せようとする「眠り男」。
犬の遠吠えのように、言動に責任を取らない「逃げ男」。
五右衛門風呂のようなバスタブだが、肝心の火はとっくに消えている。
風呂の下方周辺は、エバーグリーン・・瑞々しい緑にあふれているが、
三人の笑いや言動で「料理された」周辺は、濁ってねじれた湯気のような枝森。
実はかなり以前に【ぬるま湯三男】という題名で一度だけ展示したことのある絵を、
なぜかコロナ禍で思うところがあり、全体的に描き直した作品だ。
展示、人に集まってもらい観てもらうという「足」を多くもがれたこの2年。
新年早々、連日感染者最高数。テレビや報道で知恵者と呼ばれるゲストが、
ああすべき、こうれじゃだめだと、当事者や医療の現場を知りもせず、
勝手なことを嘯(うそぶ)いている
そんな諸々の事やオモイが、この絵を描かせたのかもしれない。
湯気がヒビ割れているようなテクスチャーにしたかった。
今年も 足をもがれるかもしれませんが、
「義足を作ってもらってでも」歩き続けます。
評論家になったらおしまいだと、よく言われますが、
正当な指摘をしてくださる評論家の方を否定するものではありません。
【ぬるま湯浸かりの三賢人】
Three wise men who are satisfied with being soaked in lukewarm water.
キャンバスに油彩、アクリル P15号(65×50cm 額寸含まず)