『十二単は母の育波(はぐくみ)』いちまいの絵2021年3月

十二単は母の育波(はぐくみ)』
12hitoe is a wave of love for a mother's daughter.
粗目アルシュ紙に交響(多種)水彩
太衣サイズ(約40×50㎝)

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二人息子を育てた亡き母が、
「ひとりは女の子を育てたかった」とよく言っていた。
自分が縫った着物を着せたり、節句もしたかったのだろうと思う。

孫娘が産まれてから、桃の節句に込められた母親の愛情について、
絵を描くことが多くなった気がする。
完成したこの絵もそのひとつで、
お雛様の十二単を、母親が娘に着付けしている姿の印象を描いた。

実際の十二単は12枚着るのではなく、十二分に、これ以上ないほどにという意味。
自分の胎からこの世に生まれ出た命・・娘が毎年の12か月・・とりわけ、
寒い冬を無事に越して、桃が咲く時期まで無事に過ごせることを願い、
寄せては返す波のような育みという愛情。

いつかは孫娘も、涙する娘に見送られる瞬間を経験するだろう。
その時自分は、その場を静視できないかもしれない。

自分では珍しく、金色を屏風の背景のように散りばめた。
着物にも背景にも、桃や波や雲のエネルギーの印象を配置した。
母が握る娘の手・・肌色の色合いで変化させたが、
同じ塊に見えるので、娘の手は白くした。
十二単の衣の順番は、あえて袖と同じにしなかった
様々な意図通りにはいかない成長の12か月ごとの意味合いで。

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