『天国の食卓~亡き父へ~』いちまいの絵8月

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父が61歳の生涯を閉じてから30年近くになる。
糖尿病から腎不全になり、心筋梗塞を併発し、
人工透析患者となって、入退院を繰り返し、
そのまま病院で息を引き取った。

人一倍食べることが大好きだった父が、
最後まで、タイ米時代の減塩・カリウム抜き・病院食だった。
「お父さんが食事を拒否するので困っています。」
病院からの連絡で、何度も仕事帰りに面会に行った。
がんばって食べて、退院できるようになってほしい・・
そんな思いから、きつい言葉も父に吐いた。

父の最後を看取り、病院から葬儀屋の車に同乗、父と共に実家に戻った。
一人だけになってから、こみ上げる思いを抑えられず、自分は大泣きした。
近所中が起きるのではないかというくらいの絶叫で・・。

その後描いた父の肖像画には、緑葉の樹木(実家のあった小平市)が
背景となった。幼い頃私に作ってくれた紙飛行機が、優しい風に泳ぐ。
手前のテーブルには、晩年「この世で」食べられなかった、
父の好物を並べて描いた。ご飯も釜で炊いた特産米にした。
ご満悦の父の食卓は「あの世の」ものだが、
もう痛みも苦しみも多くの薬もない。

この絵を発表した際、批判する人もいた。
こんなプライベートすぎる絵は、展示じゃなくて、
家族にプレゼントすればいいんだと。
でも私は、個人的な内奥の思いが無くて、なにが絵だと、
今でも思っている。

これを今月の絵に選んだ理由は、たぶんコロナ渦中だからだろう。
持病を持つ年配者への思いもあったかもしれない。

『天国の食卓~亡き父へ~』Heaven's Dining Table-To the Dead Father-
キャンバスに油彩など。 約440×530mm(額込み)