紙に水彩、アクリルなど
470×550mm(額無しの大きさ)
明るい日差しが徐々に和らいで
光線の色が変化して
夕刻へと次々とページが開かれていく。
頬に当たる風がまだ暖かく、畦道の草と田んぼの稲が
心地良さそうにたなびく。
秩父に来て、作られた観光地として勧められるものや
にわかカメラマンが押し寄せる場所を描くことに
全く興味が無かった私は
遠ざかっていたここ寺坂に、自分の意志でようやく辿り着いた。
徐々に変化する世界を、ここで見たいと思ったからだ。
日本原風景とか称して、有名な棚田は各地に在る。
傾斜のきつい棚田は、以前よく行っていた新潟県津南町に在る。
でも、ここに佇んでいると、
自分の子供の頃の懐かしい香りと
重ねてきた歳と過ぎていった時間を経た自分のイマジネーションが
風となって交差するように、そよいでくる。
だからこのゆったりとした風は
北風ではなく、温かみを含んだ風
夕凪なのだ。
絵としては、かなりの難所を越えた感じだ。
自分が多くの中で、何が一番見えたのかを
統合し、削り、対照的に表現するのが
まるで大工仕事のようだった。
心に見えた流れ、楽しい音楽のようなライン
それが見えたもののひとつだった。
きっと寺坂棚田の傾斜も緩やかだからだろう。