霜の童(わらべ)が私に言った。

霜の童(わらべ)が
朝早く集まってきて
私に言った。

おじさん、まだ始めないの



うるさいなあ、
黙っててくれよ

寒くて体中が痛むんだ


霜の童(わらべ)が
きいきい音を立てて作業していたので
私は言った。


うるさいなあ
何をしているんだい

おじさん、いつまで
ぐずぐずしているんだい
僕らは 今だから出来る切子をしているんだよ



霜の童(わらべ)が
寝床の窓に集まってきて
私に言った。

おじさん
僕たち もう描き終っちゃうよ



うるさいなあ
どうせ、おまえたちは
ガラスの画布に貼り付くことしか
出来ないだろう
おれは線を描き 空を描き 光を描いているんだよ




霜の童(わらべ)は
それっきり
私の元に 来なくなった。

彼らの『画布』に行って見ると

そこには
空が写しこまれて 幾重にも生きた線が
引かれていて輝いていた