さようなら、健治義兄の家


秩父銘仙最盛期に養蚕業を営んでいた古民家。
昨年暮れに亡くなった健治義兄の生家だが、
新盆も済ませ、29日にここを引き払うことになった。
秩父夜祭の歌舞伎役者(上町当番の時)は、
この家で着替えや化粧をし、この二階から屋台の舞台に
登場していたそうだ。
私の自宅から近いこともあって、しばしばここで
義兄(おにい)さんと夕餉を共にしたり
杯を交わしたりした。酔うと、昔取った杵柄の
自慢話に口が滑らかになるが、本来世話好きで
搬入搬出など尽力してくださった。
道路沿いなので、前を通ることはあっても、ここに
立ち寄ることはもうできない。
なんだかとても心身が疲れてしまった。
さようなら、かつての栄華の家。
さようなら、お兄さん。

[昨日の断片]180829